丈夫な歯はタコで祈願する

普通の家庭に生まれ育った私のお食い初めはごくごく普通な物でした。祖父母や両親が小さい私を抱いて、料理を食べさせる真似をしてくれた時の写真が残っています。

私の前に並べられた料理も、お赤飯に尾頭付きの鯛、お吸い物など、育児書通りのものです。ただ一つ違っているのは、料理の中にゆでたタコが混ざっているという点でした。
一般的には丈夫な歯が生えることを願って、お食い初めの時に石を歯に当てるそうですが、私の生まれ育った四国の高松では、石の代わりにタコを使います。

タコのような硬いものでも噛める丈夫な歯がはえるように、との願いが込められているのでしょう。祖母がわざわざ生のタコを買ってきて、私のためにゆでてくれたと聞いています。

まだ離乳食も食べていない私がタコをくわえている写真はおおらかな時代の象徴のようで、見ていて思わず笑ってしまいました。

よく考えればタコ使う時点で、海が近く海産物と縁が深い街らしい風習ですが、私はつい最近まで全国的に当たり前の習慣だと思っていました。

他の地域では石を使うと聞いて、驚いたものです。
私の子どもが生まれお食い初めをするときには、石と一緒にタコも用意しようと決めています。今は亡き祖母がしてくれたように、私も子どものためにタコをゆでてあげたいと思っています。

お食い初め鯛の魚幸